忍者ブログ
このブログは福田文庫の読書と創作と喫茶と煙草……その他諸々に満ちた仮初の輝かしい毎日を書きなぐったブログであります。一つ、お手柔らかにお願い致します……
[1] [2] [3] [4] [5] [6]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 お蔭様で第8回「ミステリーズ! 新人賞」の一次選考を通過することが出来ましたので、構想を飲みの席で話したら罵倒してくれた友人たちにこの場を使い報告してみる……というのは建前で、タイムリーに更新したらたまには知らない人も来るかなと期待しただけだったりもする。
 
 今回のネタはQさんといる時に、もしこんな状況だったらどんな真相があり得るだろうかという何気ない会話を元に思いついた話だったのだが、日常派の良さはここら辺にあると思う。前に送ってやっぱり二次で落選した二作も、死ぬほど暇な店舗の応援に行ったとき目の前にある煙草の自動販売機を見てて、「煙草を買うふりしてるやつがいたら面白いな」と仕事そっちのけで考えたり、前に住んでいた家の近くにある学習塾の窓を見てて、「あの形状はミステリ向きの窓だな」と思っていたのがきっかけだったりした。
 普段生活していて、これってどういうことだろうと思うことは多いが、こうやって殺せばアリバイが成立するなと思う機会は少ない。何で急にこんなことを書き出したかと言えば、とある作品のレビューを読んだ時に、謎解きの謎が日常風景だとリアリティがあっても面白みがないという趣旨のものを読んだからだ。
 
 ミステリが好きな人間で、しかも自分でもいっちょ書いてやるかと思う人間は、大体の場合は密室から書くのではないかと思う。そして大概は新しいトリックを思いついたと意気込み、そして大半は既存のトリックであることを知り気落ちするのだ。自分も初めてちゃんと書いたつもりのミステリは密室だった。やっぱり新しいトリックだと息巻いて、はるか昔に書かれていることを知りひどく落胆した。
 このように、ミステリのトリックは大体の場合は既に書かれているケースが多い。それでも尚、未踏のトリックを求めて歩き続けるか、組み合わせで新たなるパターンを創出するか、それは人それぞれだが、自分の場合は日常派に逸れていった気がする。書くのもそうだが、読むものの好みも逸れた気がする。別に密室が嫌いになったのではなく、好みが変わったのだ。
 
  日常派と呼ばれるミステリの定義は様々であるだろうが、大雑把に言えば人の死なないミステリである。これは相当に適当で断定するものではない。
日常のふとした出来事の不可思議さに謎を見出し、それを解決する。全ての情報がフェアに謎解きをするために巧妙に配置され、時として人間が描けていないという決まりきったバッシングを受ける運命にある本格ミステリとは一線を画するミステリジャンルが日常派であると私は思う。無論、日常派にもメリットデメリットは存在する。
メリットとしては、先に挙げたように基本的には人が死なない。ちょっとした謎に解決を求めるので、推理に柔軟性が生まれるのだ。大半のミステリは現実の日本を舞台にしているので、人が殺された以上(もしくはそれに準じた犯罪行為)は、警察が捜査をする。クローズドサークルというものもあるが、あれも基本的にはいつか捜査の手が及ぶことを前提に犯罪が行われる。つまり、そこにはアリバイや指紋なんかが存在する。制約は厳しいのだ。だからこそ、論理的に謎解きをする舞台や条件が整うのだが、その一方で先に挙げたように既出したものが大半で、トリックの枯渇という問題にも直面する。
だが、日常派では基本的に制約が厳しくないのだ。高校のクラスで何かが盗まれたとか事件が起きても指紋を調べたり、厳しくアリバイを調べるということはないのだ。この柔軟さが推理する範囲に幅を持たせるのだ。まぁもっともデメリットもある。それは柔軟すぎて、もう机上の空論までいってしまう作品もあるということだ。警察といった絶対権力が介入したり、法律に照らし合わせたりしない以上、日常派における推理とは断言ではなく、こういう考え方が一番しっくり来るとか、あるいはこの考え方が一番無理がないというものが多いのだ。犯人を推理しても、逮捕したり出来ない事件も多く、また逮捕しないのでそもそも答え合わせがないものも多い。その結果として、言ったもん勝ちのような結論だったり、説得力を主人公が推理したという権威的なものに頼る作品も残念ながらある。
 
 話が日常派の説明になってしまったが、話題を戻すと、日常の謎にリアリティがあっても面白みがないという意見は、ゴジラという映画は怪獣が大暴れして面白いが、リアリティがないといっているのと同義だということだ。根幹を否定してはいけない。ゴジラを観る人は別に、巨大怪獣が日本に上陸したら日本政府がいかなる対応を取るのかというシミュレーションを見たいのではない。同じく、日常派を読む人間は、そこで扱われる謎に日常風景を感じたからといって、つまらないとは思わない。むしろ、その視点や日常から不可思議を拾い上げるセンスを楽しむと言っても良いだろう。無論、日ごろ生活していて不思議に思うことがあったとして、それを論じて結論を出すという行為自体がフィクションなので、個人的には日常派ミステリもいい意味で十分にリアリティはないと思うが。
PR
 hayamine.jpg
題名/『帰天城の謎 ~TRICK 青春版~』
著者名/はやみね かおる
出版社/講談社
個人的評価/15点
内容/
 ドラマTRICKとはやみねかおるのコラボ仲間由紀恵と阿部寛の人気ドラマ、TRICKの世界を、はやみねかおるがミステリー小説にした。山田奈緒子と上田次郎は過去に出会って、事件を解決していた!?

要約/単純なノベライズよりはマシと言うレベル。あくまでドラマをそのまま文章におこしたようなノベライズと比べれば小説としての意味合いはあるものの、企画した人間は頼む相手を間違えた。トリックの世界観を表現するにははやみね氏では方向性が違うと思う。とりあえず作者のトリックが好きという言葉を信じての15点。

hayamiedou.jpg題名/『本格ミステリ館焼失』
著者名/早見江堂
出版社/講談社
個人的評価/1点
内容/
本格トリックを知り尽くした者の結末を見よ本格の巨匠が死んで一年。彼の記念館に集まった関係者たちはその夜に悲惨な死を迎え、館は完全焼失! 謎を解こうと願う遺族の女性に授けられた驚愕の結末とは?
要約/
誰もが分かっているが敢えて口に出して話そうとは思わないことを、あたかも自分しか気付いていないが如く目の前で得意満面に語られたような腹だしさしかない読後感と、そのためだけに内容の大半に嘘を書き連ねた駄作。書いた意味が分からない。読む意味も分からない。そんな無意味なものをハードカバー一冊分書いた労力に1点を献上。
tutakaramaru.jpg 当ブログでは珍しい旬の話題である。
 休日と言ってもやることもなくボンヤリしていると伊達に転勤した友人から電話が掛かってきて、私に筋肉少女帯のアルバムが発売されたと告げる。全くの寝耳に水である。前作『シーズン2』で裏切られてからというもの、私は筋肉少女帯の活動にはもはや半分以上、興味を失っていた。
 とは言え、彼に筋肉少女帯の素晴らしさを伝えた私としては、ここで遅れを取る訳にはいかない。何せ私は、高校の友人にカラオケで自分より先にサザンの新曲を歌われただけで本気で怒るくらい大人気ない人間なのだ。幸いにも友人はその僻地暮らし故に、筋肉少女帯の新曲を扱うようなCDショップに恵まれず、結局登別まで車を走らせたのに収穫がなかったらしい。しめしめと、札幌在住の私は本の品揃えは悪いがCDを買う分には不自由しない某大きいだけの大型書店にて滞りなくこのアルバムを購入した次第だ。

 だが、感想から言えば友人はこのCDが買えなくて正解であったと言わざるを得ない。『新人』でかつての輝き片鱗を見出し、そして『シーズン2』の収録曲「1000年の監視者」を聴いて、オーケンの才能と同様に縮まり枯渇した彼の世界観の成れの果てに絶望した方はまず買わないほうが良いだろう。

 私は音楽に関してはミステリ以上に詳しくないので、個別に感想を書いたりとか突っ込んだ話は出来ない。ここのギターがどうだとか、音質がどうとかそういう話はまるで出来ない。ただ、かつてのオーケンに魅せられた人間として、このアルバムは駄作だと言わざるを得ない。はっきり言って、いますぐに売却しても惜しくない。
6b824c61.JPG 今回の創作は2000年に出版された創元推理文庫の競作アンソロジーである『五十円玉二十枚の謎』(若竹七海ほか)の解答編を勝手に考えたものである。
 このアンソロジーは推理作家の若竹七海女史が、大学時代に書店でアルバイトしていた時に経験した不可思議な出来事の顛末を推理するというもので、一般公募がなされたものなのですが、その当時は私も全然小説なんて書いてなかったので挑戦することが出来ませんでした。というか、ミステリに関して不勉強な私は上記した単行本を読むまでちいともこんな募集があったことも知りませんでした……
 このアンソロジーを読んだ時に自分なりに色々と考えた結果、今回書いたような顛末が思いついたのですが、その時は我ながら余り良い出来ではないと思い、自意識過剰な私もそれを敢えて拙文にして世間様に晒そうとまでは思い至らなかったのですが、最近になってある方とこの本の話になった時、
「いやぁ、俺も実はこんなオチを考えたんですけどね(ニヤリ)」
 と、いつもの悪い癖で得意満面に自分の考えた話をつらつら並べた訳です。すると、意外にも相手には高評価を頂きました。日頃、お世辞やお愛想を嫌うところのある自分ですが、こと小説のことになるとそういったポリシーをかなぐり捨てて飛びつくというところがあり、そうした流れから今回、十年前のアンソロジーに今更噛み付いたという次第であります。

 作中にカエルヤ珈琲店と昭平堂という喫茶店が登場しますが、これは前者は本当に北海道立近代美術館の近くにあるお店で、後者は喫茶店ではなく旭川にある自家焙煎の珈琲屋さんであります。
 カエルヤ珈琲店はカエルをモチーフにした喫茶店で、店中にカエルのグッズやカエルをデフォルメした絵画なんかが飾ってあります。コーヒーの味もしっかりしているし、店構えやメニューも喫茶店としての魅力が高い一軒です。昭平堂さんはたまにイオンの中でコーヒー豆の販売をされている時に利用させて頂いているのですが、ここのマンデリンは私が今まで飲んできた中で一番美味しいです。札幌に店でも構えてくれればいいのにという思いを込めて今回勝手に名前を使わせて頂いたことをこの場を借りてお詫びします。



忍者ブログ [PR]
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
[06/11 文庫]
[06/01 Q]
[01/18 鮭石狩]
[01/18 鮭石狩]
[01/05 文庫]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
福田 文庫(フクダ ブンコ)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1984/06/25
職業:
契約社員
趣味:
コーヒー生豆を炒る
自己紹介:
 24歳、独身。人形のゴジラと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。
ブログ内検索
カウンター