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このブログは福田文庫の読書と創作と喫茶と煙草……その他諸々に満ちた仮初の輝かしい毎日を書きなぐったブログであります。一つ、お手柔らかにお願い致します……
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hayamiedou.jpg題名/『本格ミステリ館焼失』
著者名/早見江堂
出版社/講談社
個人的評価/1点
内容/
本格トリックを知り尽くした者の結末を見よ本格の巨匠が死んで一年。彼の記念館に集まった関係者たちはその夜に悲惨な死を迎え、館は完全焼失! 謎を解こうと願う遺族の女性に授けられた驚愕の結末とは?
要約/
誰もが分かっているが敢えて口に出して話そうとは思わないことを、あたかも自分しか気付いていないが如く目の前で得意満面に語られたような腹だしさしかない読後感と、そのためだけに内容の大半に嘘を書き連ねた駄作。書いた意味が分からない。読む意味も分からない。そんな無意味なものをハードカバー一冊分書いた労力に1点を献上。


 アンチミステリというか、色々な思惑ありきで書かれた実験作というような呼び名が相当なのかもしれない。
 「虚無への供物」を意識して書かれているとか実験作としての側面はミステリの知識に乏しい私にはいささか分かりかねるが、単純にミステリとして面白かったかと言えば別に面白い点はどこにもない作品である。
 本書の結末やアンチミステリとしてのメッセージをどう受け取るかは読者に委ねられる形になっているので、ならば本書をアンチミステリとかそういった側面をまるで汲み取らずに一冊のミステリとしてのみ読む人間の意見もまた遵守されてしかるべきである。
 そう考えた時にはやはり本書は面白くないといわざるを得ない。
 安井令太郎という大作家の一周忌のために森の中に建てられた洋館に集められた関係者が、次々に消えていき、真相は明かされぬまま洋館は焼失してしまう。そして事件の真相を求めた女子大生の内村奈々緒は、犠牲者となった叔父の生首を持って、相手の顔から思考や残留思念を読み解くことの出来るニィと呼ばれる人物に会いに行くのである。
 プロローグとエピローグの部分を除いては、亡くなった叔父の内村十志男の一人称で事件の全容が語られている。
 だが、これらは全て嘘である。作中作家である安井令太郎が書いている名探偵の火沼蒼二の活躍する作品をモデルに作られたという設定であった洋館は全てニィの嘘であり、実際は単なる洋館だった。そしてその真相もまた単純な殺人に過ぎない。

 作中において犯人は、この事件は本格ミステリなどではなく実際の事件なのだということを敢えて公言している。
 そうした断りが入った以上、この事件の真相(犯人が三つ子で戸籍がない)はバッシングを受ける謂れはなくなる。ただそれではこの小説の面白みというものはどこに存在するのか。それは前述したようにアンチミステリ的な部分であろう。だが表があっての裏……アンチであるにも関わらず、表にあたる本格ミステリとしての内村十志男の回想はその本格ミステリとしての解答は用意されていないのだ。回想をそっくり除いた部分がアンチミステリとして描かれるなら、回想の部分においては本格ミステリとしての解答を用意しなければならないだろう。何故ならこの線引きは犯人が自ら宣言し、そしてその回想は犯人であるニィが自らの創作として語ったのである。本格ミステリと現実事件の線引きをしておきながら、解答はその二つを総括して現実事件でのみ出すと言う展開に、本書の限界を感じずにはいられない。
 一応、ニィの作り話を聞いた上で、奈々緒は自分なりの推理を展開しているが、この推理にしても本格ミステリとしての解答としては弱い。まず第一に推理の肝が本格ミステリ館の建物の構造上のみに集中していること、そして何より本格推理部分である十志男の回想においては除外されるニィを含む解決という点が問題なのだ。

 結局、作者が何を言いたいのか分からない。いや、正確に言えば分かろうとすればおぼろげながらも一つの答えは見出せる気がする。要するに、延々と書き連ねた回想部分は全くの無意味であり、現実としての殺人事件にトリックなどはないということを言いたいと考えれば非常にシンプルだ。だが、そんなことをいちいち書き下ろしで書かなくてもみんな知っている。アンチミステリとして、何一つ目新しいものがなければ、みなが知っている事実を得意満面な顔で話しているような本書は決して読みたいと思える本ではないだろう。
 そしてこうした無意味さはストーリー全体の無意味さにも繋がる。まず、ニィたちが何故、奈々緒まで殺さなければならなかったのか。世間を更に間違った推理に導くためだと言い張られてしまえばそれまでだが、もう少し突っ込んで追求すれば、それなら長ったらしい回想など入れずに、生首を持ってきた奈々緒をすぐに殺してしまえば済むことなのだ。ニィがわざわざ霊能力者のような真似をしてまで十志男の回想を述べたのは他ならない。作者が前述したような安いアンチミステリを展開したかったからに過ぎないのだ。確かに登場人物の一挙一動は作者の意図によって展開される。だが、こうした余りにも露骨なやり方では作者の作家としての力量を疑問視せねばならないだろう。推理小説で殺人犯が人を殺すのは作者が仕向けたからに他ならないが、そこには作中で動機や理由が語られるのだから。

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コメント
無題
つまらなそうだね
誰でも知ってる事をさもさもしく言うのは中2病的だね。自己演出と自己陶酔という点もあるようだから作者は中学生かもね。どこかで聞いたようなニィってネーミングセンスも痛いな。
【2010/06/06 23:14】 NAME[石狩鮭] WEBLINK[] EDIT[]
無題
根本がおかしい小説です。普通、Aという人物をAの叔父の生首と一緒に殺害したかったらと言って、生首見れば事件の真相が分かる人間になりすまして本人に持ってこさせて、延々と嘘話を聞かせて殺すという選択肢は無いですからね
【2010/06/07 01:14】 NAME[文庫] WEBLINK[] EDIT[]


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福田 文庫(フクダ ブンコ)
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1984/06/25
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