このブログは福田文庫の読書と創作と喫茶と煙草……その他諸々に満ちた仮初の輝かしい毎日を書きなぐったブログであります。一つ、お手柔らかにお願い致します……
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力のない過激派とは言え、口だけは一端のものがあり、運河が掴まえた中年の男も、彼女が袖の下にあるものをチラつかせるまでは排他的な態度で彼女らをあしらっていた。
「……運河探偵」
「何だ、ブンヤ」
「探偵いるところ事件ありって……本当なんですね」
文が感心したように呟く。その視線の先には土間で男が倒れていた。寝ているのではない、死んでいるのだ。いや、運河は正確を期すために言いなおした。その冷たい双眸は男の首筋に残る傷跡と、土間のあちこちに飛び散る血痕を目付けながら、
「何だろうな? 何か細く硬いもので首を刺したか……」
質素な民家で息絶えている男はこの家の主である。村に着いてすぐ運河が締め上げた(こちらは絞殺までには至らなかった)中年に彼女が尋ねたのは、この村で買い出しを担当している人間であった。
「こう閉鎖的だと里に降りる人間も当番制だと思ってな……」
「この人、パシられていたんですね……」
「お前のとこの白狼天狗みたいなものだな」
「あやややや、失礼な! 私はそこまで顎で使ったりしていませんよ」
「ふん、どうだかな……」
さして興味もなさそうに返事をしながら、運河は部屋の物色をしている。とは言え、前述したように質素な民家にそれほど捜すデッドスペースもなく、居間の畳をひっくり返したところで運河は手を休めると、
「やはり本は殺したやつが持っていったか……行くぞ、ブンヤ」
「え?」
運河の言葉に思わず振り返る文。しかし運河が気にも止めず、土壁の散乱した土間を男の死体ごと跨いで出て行ってしまう。彼女の頭には現場保存はあっても死者に対する追悼の念は余りないようだ。
「ちょっと待って下さい、運河探偵!」
「何だ、ブンヤ? 私はこれから真犯人を捜さにゃならんのだ。お前はあっきゅんの介抱でもしててくれ」
阿求はと言えば、村落に着くなり蹲ったままだ。そんな彼女に死体などで追い討ちをかける訳にもいかず、二人はそっとしていた。
「密室の謎はどうするんですか?」
「密室?」
さすがにこの単語には運河も足を止め、踵を返した。そんな彼女に文が追いつき、
「そうですよ。あの死体があったあの家、引き戸が開かなかったじゃないですか?」
粗末な板戸には用心棒でもしていたのか、いくら二人が引いても開かなかった。怒鳴ってみても返事もないので、運河は文に土壁を破壊させたのだ。そして土煙の向こうで二人を出迎えたのは、例の死体だったという訳だ。
「あのなぁ、ブンヤ。密室なんて言葉は軽々しく使うもんじゃないぞ?」
やれやれと頭を抱え、運河は諭すように言う。
「でも、私が疾風扇で壁を壊した時、中には誰もいないのに人が殺されていて……それに用心棒なんかなかったですし」
土間に転がっていたのは死体と土壁だけだった。板戸の前にも棒切れなどはなかったし、ましてや変な細工をした後すらなかった。それは運河も文のすぐ横で確認していた筈である。なのに、運河は頭を掻きつつ面倒臭げに、
「ブンヤ、世の中で密室と思われているものの八割は密室じゃないんだぞ。無理して鍵をかけた部屋か……もしくはだ」
「もしくは?」
「密室みたいになった部屋だ」
言うと、話は終わりとばかりに運河はまたさっさと歩き出してしまった。まだ理解しかねる文が後から色々と質問を運河の背中にぶつけてみるものの、まるで取り合おうともせずにズンズンと進んでいき、着いた先は殺された男の向かいに立つ家だ。こちらの方が若干古いくらいで、先ほどの家と変わらぬ粗末なあばら屋だ。運河は乱暴に戸を叩く。しばらくして、当然と言えば当然ではあるが、不機嫌そうな家主が顔を出して来た。殺された男に比べて、住んでいる人間もこちらの方が古い。
「何の用だ、うるせぇな」
「探偵だ。訊きたいことがある」
乱暴な振る舞いに詫びるでもなく運河は戸板に足を引っ掛けながら尋ねる。やはり当然だが、そんな態度の相手に機嫌の良く耳を貸す訳もなく、
「余所者に教えることはないね。さっさと失せろ」
後ろでやり取りを見ていた文は、あ~あと溜め息をついた。分からなくはないが、その女にそんな態度を取るだけ無駄なのに……と肩をすくめた文の予想通り、運河は奇術師が鳩を呼ぶみたいにデリンジャーを取り出すと、呆気に取られている男の顔に銃口を構えたまま、もう一度繰り返した。
「訊きたいことがある」
「……な、何でしょう?」
「向かいの家へ最後に訪れたのは誰だ?」
「そんなこと……本人に、訊けば良いじゃねぇか」
「出来ればそうするがね。死人に口無しと言うやつさ」
「な……!」
銃口以上の衝撃を受けたのか、男は言葉を失う。だが、隣人を亡くしたご近所さんを思いやる気持ちなど微塵も持ち合わせぬ運河は、
「良いから答えたまえ! 誰か来たろう? 知らんのか?」
「……坂田ってのが訪ねてきたみたいだが、上がりもせずにすぐ帰ってったよ」
「そいつの住まいはどこかね?」
「あっちに……」
「ふん。始めからそうやって素直に答えれば……」
と、その時だ――
ギャギュギョギャギュギョ!
まるで得体の知れぬ、耳を覆わさんばかりに醜い叫びが辺り一面に響き渡った。デリンジャーを前にして、口を動かすので精一杯だった男も、腰を抜かして震えていた。声がするのは……探すまでもない。
怪音を発しているのは、運河の帽子である。可愛くない猫の顔を描かれた、血で染め抜いて尚、血が足りぬほどの真紅に彩られた紅い帽子だ。
「ち……ブンヤの妖気を感じ取り、事を急いだか」
あれで、どうしてなかなか高位の力を持った妖怪であることを運河はすっかり失念していた。とにかく、彼女の見立てに狂いが生じたことに変わりはない。男が一人殺されたところまでは想定していたが、こんなにも早く黒幕とやり合う機会が巡ってこようとは……
「運河探偵! 何だか急にとんでもない妖気が……」
文が慌てて駆け寄って来た。その高位の妖怪がここまで動転しているのだ。一筋縄ではいかんだろうと、運河も表情を固くし、
「分かっている。ドルバッキーも猛っているからな」
「まさか、本を盗んだのって妖怪なんですか?」
「ま、正確には盗ませたんだろうし、妖怪かどうかは知らんが……射命丸」
「な、何です? 急に改まって……」
「あっきゅんを任せたぞ。あの子は戦闘など出来んからな」
殊勝にも頭など下げて阿求を文に頼むと、運河は駆け出した。
「って……運河探偵はどうするんですか!」
「知れたことを訊くな、ブンヤ。本を取り戻す!」
帽子の怪音と運河の背中がどんどん小さくなっていく。確かに阿求は闘いなど出来ないだろう。誰かが守ってやらねばならない。しかしだ、文は逡巡する。ここまでさんざ事件を追わせておいて肝心のクライマックスで子守とは、どうにも納得がいかないじゃないか、と。
ならば、彼女が取るべき行動は一つしかなかろう。即ち、阿求を庇いつつ戦闘に参加する……これしかあるまい。
「待って下さいよ、運河探偵! 私も行きますよ」
漆黒の翼をはためかせ、文は運河の後を追った。向かう先は村落の奥、人の身で飛び込むには無謀を絵で描いたような妖気に充ち満ちていていた……
そんな訳で左のイラスト。 素晴らしいですね。ちなみにこの絵は自作ではありません。自分はニャロメとホシノルリしか描けませんので。 こちらのイラストは私が以前にやっていたブログで、少しでもカウンタを更新ボタン連打以外の方法で回そうと考え抜いた際にたどり着いた結論として、二次創作(それも何か流行ってそうなの)をやろうと決め、結果として『らき☆すた』と『東方』のミステリ書いたんですけど、やっぱミステリに無理やり改変するのが悪いんでしょうか。第一弾の『らき☆すた』でコケたもんですから、放ったらかしにしていたんですよ、第二弾。 それで、その話をF田というのにしたところ、イラストを描いてくれたという非常に長ったらしい割に分かりにくい説明でした。F田はニコニコ動画で「幻想入り」とかやってるんで、きっと宣伝効果あるんじゃないのかしらんという下心ありきの自分に快くイラストくれたF田に感謝感謝。 そんな訳で、今回は「東方」で無理やりミステリと、慣れない戦闘描写を入れた「東方密室」を載せさせて頂きました。タイトルは言わずもがな鯨さんの作品より引用で…… 喫茶店の雇われ店長としては、お歳暮売らなきゃお歳暮売らなきゃと泡喰ってる間に日々は過ぎ去ったような気がします。昨今、年賀状も出さない連中が増えてるというのにお歳暮なんか誰が買うのかと言いたい。現に売ってる僕もお歳暮なんか出す人もいないし、金もない。現代日本の超個人主義的閉塞社会の象徴だよ、全く。旨いもん見つけたら自分にご褒美しちゃうムードの現代人にはなまじ心のこもった贈り物なんてのは、どだい無理な話な訳で。
推理小説愛好会の端くれにとって、十二月は「このミス」が発売される月という以外に、どんな価値があろうものか? クリスマス? 馬鹿野郎、このすめらみくにに住む者にとって意味があるのは前日だろ? と。二十三日の天皇誕生日にこそケーキで祝えば良いんだよ。お前らの心に皇室典範はないのか? そんな怒りに身を震わせながら、街行くカップルを睨む季節がやってきたな、と。まぁ、腹が立つ理由は主に歩道を横二列で歩くという一点のみで、カップル自体は良いんです。もし他の通行人を思いやり、縦一列で闊歩するカップルがいたら、地元のラブホのメンバーズカードあげても良いくらいです。ここ、サウナもあるぜ? って。
話はとても緩やかに蛇行していきましたが、「このミス」の季節が近まり、そして有栖川先生が新刊を二冊も出した(書き下ろしじゃないけれど)今年は、アリスファンを自称する自分にとっては、その順位が気になるところであります。
しかしだ。最近の有栖川作品には、どうも昔の情熱を感じないのは自分だけなんだろうか? おかしいな、本の帯にはパッションって書いてるのに。そうだね、プロテインだね。
と言う訳で、今日は『火村英生に捧げる犯罪』(文藝春秋)の書評を執り行いたいと存じます。どうぞ最後までお付き合い下さい。
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プロフィール
HN:
福田 文庫(フクダ ブンコ)
年齢:
40
性別:
非公開
誕生日:
1984/06/25
職業:
契約社員
趣味:
コーヒー生豆を炒る
自己紹介:
24歳、独身。人形のゴジラと二人暮し。契約社員で素人作家。どうしてもっと人の心を動かすものを俺は書けないんだろう。いつも悩んでいる……ただの筋少ファン。
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